【代表弁護士から】一部の弁護士は既に経済的に追い詰められている
2016年02月18日(木曜日)
弁護士会の会誌(月刊)には、毎号弁護士の懲戒事案が公告されています。
弁護士の懲戒というのは、重い順から、除名、退会命令、業務停止、戒告と四種類あり、懲戒処分をされれば必ず会誌(「自由と正義」)に掲載されることになります。
今月号(2016年2月号)の懲戒欄は、まさに弁護士の中には経済的に自壊している層がいるとしか思えない内容でした。
・退会命令 1件(会費の滞納)
・業務停止 5件
・戒告 7件
今月号で最も重い処分だったのが、
会費の滞納で「退会命令」という処分を受けたケースでした。
「退会命令」というのは、所属している弁護士会から強制的に退会させるという処分で、弁護士は弁護士会に所属していないと弁護士業ができない決まりになっていますので(強制加入団体)、つまりは弁護士を辞めさせるという処分となります。
会費の滞納くらいでそんなに重い処分となるのかと驚かれる方もいるかもしれませんが、このケースの滞納額は3年5ケ月分、約150万円というものでした。もちろん、この間弁護士会は滞納者に督促をしているはずです。それなのに支払わない。
支払わない理由は会誌には書いていないので、正確な理由はわかりません。しかし、会費も支払えない弁護士が、つまりは自分の債務も弁済できない状態にある者が、依頼者の金銭を預かるとか扱うとかそういうことを任せられないというのが、こような重い処分にでる理由かと思います。
会費の滞納といえば、今月号には懲戒となったケースがもう一件あり、10ヶ月分の滞納で業務停止2ヶ月という処分となっております。
これらのケースをみると、一部の弁護士が経済的に追い詰められ、弁護士会の会費すらまともに支払えなくなっていることがわかります。
経済的に追い詰められている弁護士の手元に預り金があると、預り金の横領といった犯罪に手を染める弁護士も出てきます。
業務上横領という犯罪が成立するか否かは別として(それは警察など捜査機関がまず判断すべき事項です)、預り金を返還しないという事案は、懲戒の対象となります。
今月号では、1000万円の預り金を返還せずというケースで、業務停止1年というものがありました。
このようなケースは以前は散発的でしたので、私も一部の不心得者の特殊な事案と考えていました。しかし、最近ではこのようなことで懲戒される例をそれなりに見かけるようになり、懲戒として表に出てくるのはほんの一部であって、氷山の下で明らかになっていないものは相当数にのぼると考えを改めざるを得ません。
弁護士を利用するということは、弁護士が経済的に安定していることを当然の前提としているのですが、その当然の前提が一部では崩れつつあります。トラブルを解決してほしくて弁護士に依頼したが、そこでもまたトラブルに巻き込まれてしまったということになりかねない世の中です。皆さん十分注意してください!